あなたがインターネットでお気に入りのサイトを見ようとして、リンクをクリックしたときのことを想像してみてください。画面に「ページが見つかりません」という表示が出たら、どのように感じるでしょうか。おそらく、「あれ?サイトがなくなったのかな」と思い、すぐに「戻る」ボタンを押して別のサイトへ行ってしまうはずです。
もし、それがあなたの会社のホームページで起きていたらどうでしょうか。せっかく興味を持って訪れてくれた大切なお客様を、入り口でお断りしているのと同じことになってしまいます。
ホームページの運営において、ページのURL(ネット上の住所)が変わることは珍しくありません。しかし、その際に適切な案内役を用意しておかないと、大きな機会損失を生んでしまいます。この案内役こそが、今回解説する「リダイレクト」です。
本記事では、ホームページ制作の現場で必須となるこの技術について、専門用語をできるだけ使わず、日常の例え話を交えながら丁寧に解説します。これを読めば、なぜリダイレクトが必要なのか、そして行わないとどのようなリスクがあるのかを、明確に理解できるはずです。
リダイレクトとは何か?「郵便物の転送」で考える
まず結論から申し上げますと、リダイレクトとは「あるページにアクセスした閲覧者を、自動的に別のページへ転送する仕組み」のことです。
この仕組みを理解するために、最もわかりやすい例えが「郵便局の転居・転送サービス」です。
あなたが現実世界で引っ越しをしたとします。古い住所宛に手紙が届いたとき、郵便局に転居届を出していれば、手紙は自動的に新しい住所へ転送されます。送り主は新しい住所を知らなくても、古い住所に送るだけであなたに手紙を届けることができます。
Webの世界におけるリダイレクトも、これと全く同じ役割を果たします。
例えば、サイトのリニューアルで「商品紹介ページ」のURLが変わったとします。
- 古い住所(URL):example.com/old-page
- 新しい住所(URL):example.com/new-page
リダイレクトを設定しておけば、お客様が古い住所のブックマークをクリックしたとしても、一瞬で自動的に新しい住所のページが表示されます。お客様はURLが変わったことに気づかないほどスムーズに、目的の情報にたどり着けるのです。
もしリダイレクト(転送届)が設定されていなければ、お客様は「宛先不明」の真っ白なエラー画面を目にすることになります。これでは、せっかくの訪問者をがっかりさせてしまいます。つまり、リダイレクトとはWebサイトにおける「おもてなし」の一つなのです。

なぜリダイレクトが必要なのか?2つの大きな理由
リダイレクトを設定すべき理由は、大きく分けて2つあります。「人間(閲覧者)のため」と「検索エンジン(Googleなど)のため」です。
閲覧者のストレスをなくすため
前述の通り、一番の目的は閲覧者を迷子にさせないことです。 古いリンクをクリックしてエラー画面が表示されることは、閲覧者にとってストレスです。特に、他のブログやSNS、あるいは名刺のQRコードなどに古いURLが残っている場合、そこからアクセスしてくる方は大勢います。そのすべての入り口に対して「現在は新しいページこちらです」と自動で案内することで、機会損失を防ぐことができます。
検索エンジンからの「評価」を引き継ぐため
実は、ここがホームページ運営において非常に重要なポイントです。 Googleなどの検索エンジンは、各ページに対して「このページは人気がある」「このページは情報が正確だ」といった評価(点数のようなもの)をつけています。
もし、リダイレクトをせずに新しいURLでページを作り直してしまうと、検索エンジンはそれを「全く新しい、別のページ」として認識します。つまり、これまで古いページが長年かけて積み上げてきた「信頼」や「評価」がゼロにリセットされてしまうのです。検索順位が大幅に下がり、アクセス数が激減する原因になります。
適切にリダイレクトを設定することで、検索エンジンに対して「このページは引っ越しました。評価も新しい住所へ引き継いでください」と伝えることができます。これにより、検索順位を大きく落とすことなく、サイトの運営を続けることができるのです。
リダイレクトには2種類の「引っ越し」がある
リダイレクトには、主に「301リダイレクト」と「302リダイレクト」という2つの種類があります。数字が出てくると難しく感じるかもしれませんが、違いは「期間」だけです。
301リダイレクト:完全な引っ越し
これは「恒久的な転送」と呼ばれます。 現実世界で言えば、家を購入して完全に引っ越す場合や、結婚して姓が変わるような場合です。「もう前の住所(URL)に戻ることはありません」という宣言です。
サイトをリニューアルしてURLが変わった場合や、ホームページ全体を別のドメイン(〇〇.comなどのインターネット上の住所)に移転した場合は、基本的にこの「301」を使います。検索エンジンに対しても「これからの評価はすべて新しいページにつけてください」と伝える強い意味を持ちます。
302リダイレクト:一時的な仮住まい
こちらは「一時的な転送」と呼ばれます。 現実世界で言えば、家のリフォーム工事のために数週間だけホテル暮らしをする場合や、長期出張のようなイメージです。「今は別の場所にいますが、いずれ元の場所に戻ります」という意味になります。
例えば、キャンペーン期間中だけ特設ページを見せたい場合や、メンテナンス中で一時的に案内ページを表示させたい場合に使います。検索エンジンに対しては「評価は元の住所に残しておいてください」と伝えることになります。
Webサイト運営の現場では、サイト移転などのケースが多いため、一般的には「301リダイレクト(完全な引っ越し)」を使う頻度が圧倒的に高いと覚えておいてください。

具体的にどんな場面で使うのか
では、実際にどのようなタイミングでリダイレクトが必要になるのでしょうか。よくある3つのケースをご紹介します。
ケース1:サイトのリニューアルをしたとき
ホームページを新しく作り直すと、ページの構成が変わることがよくあります。 例えば、「会社概要」のページが、以前は domain.com/company.html だったのに、新しいサイトでは domain.com/about/ に変わるような場合です。このとき、古いURLから新しいURLへ1対1でリダイレクトを設定します。これを怠ると、過去にブックマークしてくれていたお客様がアクセスできなくなります。
ケース2:パソコン用とスマホ用でURLが違うとき
最近は少なくなりましたが、パソコンで見たときとスマートフォンで見たときで、別のURLを用意している場合があります。 スマホでパソコン用のURLにアクセスしてきた人を、自動的にスマホ用の見やすいページへ転送する場合にもリダイレクト技術が使われています。これは、お客様が見ている端末に合わせて最適なページを案内するという、親切な誘導です。
セキュリティを強化したとき(SSL化)
現在、多くのサイトがセキュリティ向上のために「SSL化」を行っています。これを行うと、URLの先頭が http:// から https:// (sがつきます)に変わります。 たった1文字の違いですが、コンピューターにとっては別の住所です。「http」でアクセスしてきた人を、安全な「https」へ自動的に転送するためにもリダイレクトは必須です。これを行わないと、お客様のブラウザに「保護されていない通信」という警告が出てしまい、不安を与えてしまいます。
リダイレクトを行わなかった場合の末路
もし、「面倒だから」という理由でリダイレクト設定を無視してサイトのURLを変更したら、どうなるのでしょうか。Web制作の現場を見てきた経験から、実際に起こりうる事態をお話しします。
まず、アクセス数が激減します。 Googleの検索結果に表示されているのは、過去の情報の蓄積です。リダイレクトがないと、検索結果をクリックした人は全員エラー画面に直面します。Googleは「このサイトはエラーばかりで役に立たない」と判断し、検索順位を急速に下げます。一度失った評価を取り戻すには、長い時間がかかります。
次に、他サイトからの紹介リンクが「リンク切れ」になります。 誰かがあなたのブログ記事を「この記事が役に立つよ」と紹介してくれていたとしても、そのリンク先がエラーになれば、紹介してくれた人の顔を潰すことになりますし、そこからの流入もゼロになります。
つまり、リダイレクトの設定を怠ることは、これまで築き上げてきた「資産」を自ら捨ててしまうことに等しいのです。

リダイレクト設定はいつまで残すべきか?
お客様からよくいただく質問に、「この転送設定は、いつか解除しても良いのでしょうか?」というものがあります。 結論から申し上げますと、「可能な限り、無期限で残しておくこと」が理想です。
郵便局の転送サービスは通常1年間で終了してしまいますが、Web上の転送設定には期限がありません。もし設定を解除してしまうと、その瞬間から再び「ページが見つかりません」というエラーが表示されるようになってしまいます。
数年後に、ふと古い名刺のQRコードや、昔のブックマークからアクセスしてくれるお客様がいるかもしれません。そのような再訪問のチャンスを逃さないためにも、設定は残しておくのが安全です。 Googleも基本的には転送設定を維持することを推奨しています。サーバーの契約変更などでやむを得ず設定を見直す場合でも、少なくとも1年以上は維持することをおすすめします。
注意!やってはいけない「とりあえずトップページへ」
リダイレクト設定を行う際、一つだけ注意していただきたい落とし穴があります。それは、「削除したページを、とりあえず全てトップページに転送してしまうこと」です。
例えば、あなたが「特定の商品の詳細」を知りたくてリンクをクリックしたのに、いきなり「会社の玄関(トップページ)」に飛ばされたらどう思うでしょうか。「あれ?探していた商品が見当たらないな」と混乱し、ストレスを感じてしまうはずです。
Googleなどの検索エンジンも、内容が全く無関係なページへのリダイレクトは推奨していません。 もし、引っ越し先となる関連ページが存在しない(サービス終了などでページそのものをなくす)場合は、無理にリダイレクトをせず、正直に「ページが見つかりません」という画面を表示する方が、結果としてユーザーや検索エンジンに対して誠実な対応となります。 これを専門用語で「404(ヨンマルヨン)」と呼びますが、適切な404表示は決して悪いことではありません。無理な転送は避け、ケースバイケースで使い分けることが大切です。
どうやって設定するのか(概要)
「仕組みはわかったけれど、どうやって設定するの?」と思われるかもしれません。技術的な詳細は専門的になるため割愛しますが、概要だけお伝えします。
WordPress(ワードプレス)を使っている場合
多くのホームページで使用されている「WordPress」であれば、比較的簡単に設定が可能です。 専用の「プラグイン」という拡張機能(例えば「Redirection」というプラグインが有名です)をインストールすれば、難しいプログラミングコードを書かなくても、「古いURL」と「新しいURL」を入力するだけで設定が完了します。初心者の方でも、画面の案内に従えば設定できるレベルです。
その他のシステムの場合
サーバーの設定ファイル(.htaccessなどと呼ばれます)を直接編集する必要があります。これは呪文のようなコードを記述する作業で、一文字でも間違えるとサイト全体が表示されなくなるリスクがあります。 もしWordPress以外の環境でリダイレクトが必要になった場合は、無理に自分で触ろうとせず、ホームページを制作した会社や、専門知識のあるWebエンジニアに相談することを強くおすすめします。「リダイレクト設定をお願いしたい」と伝えれば、プロならすぐに意図を理解してくれます。

まとめ
本記事では、ホームページにおける「リダイレクト」について解説しました。
重要なポイントを振り返ります。
- リダイレクトとは、郵便の転送届のようなもの:古いURLへのアクセスを自動で新しいURLへ案内する仕組みです。
- 閲覧者への「おもてなし」:エラー画面を見せずに、スムーズに目的のページへ誘導するために必要です。
- 検索エンジンの「評価」を守る:サイトの検索順位を落とさないために、資産(評価)を引き継ぐ役割があります。
- 2種類の転送:「301(完全な引っ越し)」と「302(一時的な転送)」があり、リニューアル時は主に301を使います。
ホームページのURL変更は、単なる文字の変更ではありません。そこには、お客様とのつながりや、検索エンジンからの信頼といった、見えない資産が含まれています。
もし今後、ホームページのリニューアルやドメインの変更を検討される際は、ぜひ「リダイレクトの設定は大丈夫か?」という視点を持ってください。このひと手間をかけるかどうかが、リニューアル後のサイトの成功を大きく左右します。
見えない部分だからこそ、丁寧な処理を行う。それが、強いホームページを育てる秘訣です。


